化合物から見る代謝経路

最終更新日:2021/09/09

生化学の教科書には様々な代謝経路の流れが順序立って書かれている. 一方この記事は,森の代わりに木を見るかのように, 個々の化合物が代謝の中でどういう役割を担っているか記述する. この記事を読んで代謝を学ぶというよりは,辞書のように使われることを想定する.

グルコース

解糖系・糖新生

米やパンや麺など,いわゆる炭水化物の多くを構成する単糖. マルトース(Glc(α1→4)Glc)やトレハロース(Glc(α1↔1α)Glc)などの 2 糖をつくる. デンプングリコーゲンとして貯蔵される.

ヒトの細胞は GLUT 輸送体によってグルコースを取り込む. GLUT 輸送体は,目的に応じていくつかの種類があり,取り込む速さや性質が異なる. 肝臓は,グルコースを血中に放出したり血中から取り込んだりすることで血糖値を調節する. これを迅速に可能にするために,肝臓の輸送体( GLUT1 , GLUT2 )は常に細胞膜上にあってグルコースを出し入れできる状態である. また,脳はグルコースに強く依存するため,脳の輸送体( GLUT3 )も常に細胞膜上にある. 一方,骨格筋は常にグルコースを取り込み続けるわけではない. 血糖値が高いときだけグルコースを取り込んでグリコーゲンとして貯蔵しておき, 激しい運動時にそれをグルコースに分解してエネルギーに変換する. よって筋肉の輸送体( GLUT4 )は普段細胞内の小胞体に隔離されていて, インスリンの刺激を受けると細胞表面に現れてグルコースを取り込むようになっている.

GLUT 輸送体は受動輸送,すなわち細胞内外の濃度勾配に従ってグルコースを輸送する. そのため,細胞内のグルコース濃度が高くなるとグルコースを取り込みにくくなってしまう. 細胞がグルコースを必要としているとき, 細胞内のグルコースはヘキソキナーゼによって即座にグルコース 6-リン酸に変換される(ATP→ADP, Mg2+依存). グルコース 6-リン酸は輸送体を通って細胞内外を移動することができない. これによって,たとえ細胞外のグルコース濃度が低いときであっても, 細胞は GLUT 輸送体からグルコースを取り込み続けることができる.

血糖値,すなわち血液中のグルコース濃度は,一定の値に保つことが重要である. この調節は,グルカゴンとインスリンの 2 つのホルモンによって行われる. 血糖値が低いときには膵臓のランゲルハンス島 A 細胞からグルカゴンが分泌される. 肝臓はこれに反応して,グリコーゲンを分解したり糖新生を行ったりしてグルコースを生成し,血中へと放出する. 一方,血糖値が高いときにはランゲルハンス島 B 細胞からインスリンが分泌される. 肝臓や骨格筋はこれに反応して,グルコースを積極的に細胞内へと取り込み,血糖値を下げる.

ガラクトース

食事に含まれる糖. ラクトース(Gal(β1→4)Glc)に含まれる.

肝臓でガラクトキナーゼによってガラクトース 1-リン酸に変換される(ATP→ADP)

フルクトース

ケトース. スクロース(Glc(α1↔2β)Fru)に含まれる.

筋肉や腎臓では,ヘキソキナーゼによって 6 位炭素がリン酸化され,フルクトース 6-リン酸となる. 一方,肝臓ではフルクトキナーゼによって 1 位炭素がリン酸化され,フルクトース 1-リン酸となる.

マンノース

果実などに含まれる.

ヘキソキナーゼによって 6 位炭素がリン酸化され,マンノース 6-リン酸となった後, ホスホマンノースイソメラーゼによってフルクトース 6-リン酸に変換される.

デンプン

植物における糖の貯蔵形態.枝分かれのないアミロースと, α1→6 結合による枝分かれのあるアミロペクチンがある. 消化液中のアミラーゼによってグルコースへと加水分解され,吸収される.

貯蔵細胞内では,デンプンホスホリラーゼによって非還元末端のグルコース残基がグルコース 1-リン酸として切り出される(Pi 消費)

グリコーゲン

動物における糖の貯蔵形態. α1→6 結合による多くの枝分かれがある. 消化液中のアミラーゼによってグルコースへと加水分解され,吸収される.

グリコーゲンホスホリラーゼ(PLP 依存)は,グリコーゲンの α1→4 結合を加リン酸分解し,非還元末端のグルコース残基をグルコース 1-リン酸として切り出す. 脱分枝酵素オリゴ(α1→6)→(α1→4)グルカントランスフェラーゼは,グリコーゲンの α1→6 結合による分枝を末端へと転移し, α1→4 結合にする.

グルコース 6-リン酸

解糖系・糖新生・グリコーゲン代謝・ペントースリン酸経路

ヘキソキナーゼによって,グルコースの 6 位炭素がリン酸化されたもの. GLUT 輸送体を通って細胞内に入ったグルコースがグルコース 6-リン酸に変換されると, 再び細胞外に出ていくことができなくなる.

ヘキソキナーゼには I から IV までのアイソザイムがある. ヘキソキナーゼ IV は肝臓に存在し,特にグルコキナーゼと呼ばれる. 血糖値が低いとき,グルコキナーゼは調節タンパク質による阻害を受けて核内に隔離されているため,肝細胞はグルコースを取り込めない. しかし肝細胞内のグルコース濃度が上がると,グルコキナーゼが働き,解糖によって血糖値を下げることができるようになる.

また,肝臓にはグルコース 6-リン酸をグルコースと無機リン酸 Pi に分解する グルコース 6-ホスファターゼが存在するため,グリコーゲン分解や糖新生によって得られたグルコース 6-リン酸をグルコースに変換して血中に放出し,血糖値を上げることができる. グルコース 6-ホスファターゼはヘキソキナーゼと逆の反応を行うため,小胞体内に局在し,ヘキソキナーゼの存在するサイトゾルから隔離されている. また,筋肉にはグルコース 6-ホスファターゼが存在しない.

解糖系では,ホスホヘキソースイソメラーゼによってフルクトース 6-リン酸に変換される(Mg2+依存,可逆)

グリコーゲン代謝では,ホスホグルコムターゼによってグルコース 1-リン酸に変換される(可逆)

ペントースリン酸経路では, グルコース 6-リン酸デヒドロゲナーゼ(Mg2+依存)によって NADP+ を用いて酸化されて 6-ホスホグルコノ-δ-ラクトンとなった後, ラクトナーゼ(Mg2+依存)によって加水分解されて 6-ホスホグルコン酸となる.

グルコース 1-リン酸

グリコーゲン代謝

グリコーゲンホスホリラーゼ(PLP 依存)によるグリコーゲンの分解で生じる. この酵素は,エピネフリン(アドレナリン)やグルカゴンの刺激による細胞内 cAMP 濃度上昇に端を発するカスケードによって活性化される.

UDP-グルコースピロホスホリラーゼによって UTP と反応し, UDP-グルコースになる.

ホスホグルコムターゼによってグルコース 6-リン酸に変換される(可逆)

ガラクトース 1-リン酸

ガラクトース代謝

ガラクトキナーゼ(ATP→ADP)によってガラクトースの 1 位炭素がリン酸化されたもの. UDP-グルコース:ガラクトース 1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼによって UDP-グルコースと反応し, UDP-ガラクトースになる.

UDP-グルコース

グリコーゲン代謝・ガラクトース代謝

UDP-グルコースピロホスホリラーゼによってグルコース 1-リン酸と UTP (ウリジン三リン酸)が反応し, グルコースと UDP (ウリジン二リン酸)が結合した糖ヌクレオチドとなって活性化されたもの.

グリコゲニンは,そのグリコシルトランスフェラーゼ活性によって UDP-グルコースのグルコース残基を自らに転移し,グリコーゲン合成を開始する. グリコーゲンシンターゼは, UDP-グルコースのグルコース残基をグリコーゲンの非還元末端に転移し,グリコーゲン鎖を伸長する. グリコーゲンシンターゼは脱リン酸化によって活性化される.

UDP-グルコース:ガラクトース 1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼは, UDP-グルコースガラクトース 1-リン酸UDP-ガラクトースグルコース 1-リン酸に変換する.

UDP-ガラクトース

ガラクトース代謝

UDP-グルコース:ガラクトース 1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼによって UDP-グルコース由来の UDP にガラクトース 1-リン酸由来のガラクトースが結合して生じる.

UDP-グルコース 4-エピメラーゼによって,エピマーである UDP-グルコースに変換される.

フルクトース 6-リン酸

解糖系

フルクトースの 6 位炭素にリン酸基が結合したもの.

グルコース 6-リン酸からホスホヘキソースイソメラーゼ(Mg2+依存,可逆)によって, あるいはフルクトースからヘキソキナーゼ(ATP→ADP,Mg2+依存)によって得られる.

トランスケトラーゼによるキシルロース 5-リン酸からエリトロース 4-リン酸への 2 炭素転移, あるいはトランスアルドラーゼによるセドヘプツロース 7-リン酸からグリセルアルデヒド 3-リン酸への 3 炭素転移によって得られる.

ホスホフルクトキナーゼ-1 によってフルクトース 1,6-ビスリン酸に変換される(ATP→ADP,Mg2+依存,不可逆). 肝臓ではホスホフルクトキナーゼ-2 によってフルクトース 2,6-ビスリン酸にも変換される(ATP→ADP)

フルクトース 1-リン酸

フルクトース代謝

肝臓の酵素フルクトキナーゼによってフルクトースから得られる. アルドラーゼ B によって,グリセルアルデヒドとジヒドロキシアセトンリン酸に開裂する. グリセルアルデヒドはトリオースキナーゼによってグリセルアルデヒド 3-リン酸となる.

フルクトース 1,6-ビスリン酸

解糖系・糖新生

フルクトースの 1 位炭素, 6 位炭素にリン酸基が一つずつ結合したもの. 「ビス」は 2 つのリン酸基が異なる場所に結合していることを表す.

ホスホフルクトキナーゼ-1 によってフルクトース 6-リン酸から得られる(ATP→ADP または PPi→Pi,Mg2+依存). この反応は ATP が少ないときに促進され,多いときに阻害される.また ADP , AMP の蓄積によっても促進される.

肝臓ではフルクトース 1,6-ビスホスファターゼによってフルクトース 1,6-ビスリン酸からフルクトース 6-リン酸に戻る反応も起こる(ただし ATP は得られない). すなわち肝臓ではフルクトース 6-リン酸とフルクトース 1,6-ビスリン酸の間の相互変換が常に起こっている. これを無益回路という.

フルクトース 2,6-ビスリン酸はホスホフルクトキナーゼ-1 を活性化し,フルクトース 1,6-ビスホスファターゼを阻害するため, フルクトース 2,6-ビスリン酸の濃度が高いとフルクトース 6-リン酸からフルクトース 1,6-ビスリン酸への変換が進み, 逆にフルクトース 2,6-ビスリン酸の濃度が低いとフルクトース 1,6-ビスリン酸からフルクトース 6-リン酸への変換が進む.

また,アルドラーゼ A によって逆アルドール反応を起こし,ジヒドロキシアセトンリン酸グリセルアルデヒド 3-リン酸になる(可逆)

フルクトース 2,6-ビスリン酸

解糖系・糖新生

フルクトースの 2 位炭素, 6 位炭素にリン酸基が一つずつ結合したもの.

肝臓において,ホスホフルクトキナーゼ-2 によってフルクトース 6-リン酸から得られ(ATP→ADP), フルクトース 2,6-ビスホスファターゼによってフルクトース 6-リン酸に戻る(このとき ATP は得られない). これらの 2 つの酵素は同じタンパク質内の 2 つの部位として存在しており, リン酸化を受けると後者が,脱リン酸化を受けると前者が亢進される. グルカゴンの刺激はこれをリン酸化,インスリンの刺激はこれを脱リン酸化する. また,キシルロース 5-リン酸はこれの脱リン酸化を促進する.

フルクトース 2,6-ビスリン酸は, ホスホフルクトキナーゼ-1 によるフルクトース 1,6-ビスリン酸の生成を促進し, フルクトース 1,6-ビスホスファターゼによるフルクトース 1,6-ビスリン酸の脱リン酸化を阻害する.

ジヒドロキシアセトンリン酸

解糖系・グリセロール新生

3 炭糖.アセトンの 1 位炭素, 3 位炭素にそれぞれヒドロキシ基が結合し,そのうち一方にさらにリン酸基が結合したもの.

フルクトース 1,6-ビスリン酸フルクトース 1-リン酸のアルドラーゼによる開裂(可逆)で得られる. トリオースリン酸イソメラーゼによってグリセルアルデヒド 3-リン酸となり(可逆),この酵素が欠損すると致命的な溶血性貧血が起こる.

グリセロール 3-リン酸デヒドロゲナーゼによってグリセロール 3-リン酸へと還元される.

グリセルアルデヒド 3-リン酸

解糖系

3 炭糖.グリセロールの 1 位炭素を酸化して得られるアルデヒドの 3 位炭素にリン酸基が結合したもの.

アルドラーゼによる開裂(アルドール縮合の逆反応)を含む一連の反応によって, 1 分子のフルクトース 1,6-ビスリン酸,あるいは1分子のフルクトース 1-リン酸から 2 分子のグリセルアルデヒド 3-リン酸が得られる.

また,トランスケトラーゼによってキシルロース 5-リン酸が 2 炭素を失うことで生じる.

グリセルアルデヒド 3-リン酸デヒドロゲナーゼ(NAD+⇄NADH+H+, Pi消費)によって 1,3-ビスホスホグリセリン酸となる.

1,3-ビスホスホグリセリン酸

解凍系

グリセルアルデヒド 3-リン酸デヒドロゲナーゼ(NAD+⇄NADH+H+, Pi消費)によって グリセルアルデヒド 3-リン酸から得られる. ホスホグリセリン酸キナーゼ(ADP⇄ATP)によって 3-ホスホグリセリン酸となる.

赤血球ではビスホスホグリセリン酸ムターゼによって 2,3-ビスホスホグリセリン酸となる.

2,3-ビスホスホグリセリン酸

解糖系

赤血球において,ビスホスホグリセリン酸ムターゼによって 1,3-ビスホスホグリセリン酸から得られる. 2,3-ビスホスホグリセリン酸ホスファターゼによって 3-ホスホグリセリン酸となる.

3-ホスホグリセリン酸

解糖系

ホスホグリセリン酸キナーゼ(ADP⇄ATP)によって 1,3-ビスホスホグリセリン酸から得られる. ホスホグリセリン酸ムターゼ(可逆)によって 2-ホスホグリセリン酸となる.

2-ホスホグリセリン酸

解糖系

ホスホグリセリン酸ムターゼ(可逆)によって 3-ホスホグリセリン酸となる. エノラーゼ(可逆)によってホスホエノールピルビン酸となる.

ホスホエノールピルビン酸

解糖系・糖新生

ピルビン酸のケトエノール互変異性体のうちエノール型のものにリン酸基が結合したもの. ミトコンドリア内外を移動することができる.

エノラーゼ(可逆)によって,グリセルアルデヒド 3-リン酸となる.

ピルビン酸キナーゼによって,ピルビン酸に変換される(ADP→ATP,不可逆,K+依存,Mg2+またはMn2+依存). この反応は,フルクトース 1,6-ビスリン酸によって促進される.

ピルビン酸

解糖系・発酵

炭素数 3 .解糖系の最終産物であり,糖新生とグリセロール新生の出発点である.ミトコンドリア内外を移動できる.

ピルビン酸キナーゼ(ADP→ATP)によってホスホエノールピルビン酸から得られる.この反応は不可逆であり,糖新生の際はピルビン酸カルボキシラーゼ(ATP→ADP,ビオチン依存)によってオキサロ酢酸へと変換される.

乳酸発酵では,乳酸デヒドロゲナーゼによって ʟ-乳酸となる(NADH+H+⇄NAD+). エタノール発酵では,ピルビン酸デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドと CO2 に分解される(TPP依存,不可逆)

リンゴ酸酵素(NAD+/NADP+,可逆)によるリンゴ酸の酸化的脱炭酸によって得られる.

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(真核細胞ではミトコンドリア,細菌ではサイトゾルに局在)による 酸化的脱炭酸(不可逆,NAD+ → NADH, CoA-SH 消費, CO2 放出, TPP/FAD/リポ酸依存)を受けてアセチル CoAとなる. チアミンが欠乏するとピルビン酸がアセチル CoA に変換できず,糖質代謝に支障が出て主に神経系に異常をきたす. また代わりに乳酸発酵が進み,乳酸アシドーシスを起こすこともある.

乳酸

発酵

炭素数 3 .ピルビン酸のケトン基が還元されてヒドロキシ基になったもの.

酸素が不足しているとき,細胞質の酵素乳酸デヒドロゲナーゼによってピルビン酸から得られる(NADH+H+⇄NAD+). 激しい運動時に筋肉中でNAD+が不足した際は,乳酸発酵によってNAD+を再生する. 発生した乳酸は肝臓に運ばれ,再びグルコースへと再生される. こうして形成される,筋肉でグルコースを乳酸にし,肝臓で乳酸をグルコースにするというサイクルを,コリ回路という.

アセトアルデヒド

発酵

酢酸の還元により得られる炭素数 2 のアルデヒド(アセトは酢酸を意味する).

エタノール発酵を行う微生物において, ピルビン酸デカルボキシラーゼによってピルビン酸から得られ(TPP依存,Mg2+依存,CO2放出), アルコールデヒドロゲナーゼによってエタノールへと還元され(NADH+H+⇄NAD+),放出される.

6-ホスホグルコン酸

ペントースリン酸経路

グルコースの 1 位炭素を酸化して得られるカルボン酸(グルコン酸)に,リン酸基が結合したもの.

グルコース 6-リン酸デヒドロゲナーゼ(Mg2+依存)によるグルコース 6-リン酸の酸化から生じる.

6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼによってリブロース 5-リン酸となる(NADP++H+→NADPH , CO2 放出)

リブロース 5-リン酸

ペントースリン酸経路

ケトペントース(炭素数 5 のケトース).

6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼによる 6-ホスホグルコン酸の酸化(CO2 放出)で得られる.

ホスホペントースイソメラーゼによって異性体のリボース 5-リン酸となる. 一方,リブロース 5-リン酸エピメラーゼによって 3-エピマーのキシルロース 5-リン酸となる.

キシルロース 5-リン酸

ペントースリン酸経路

ケトペントース(炭素数 5 のケトース).

リブロース 5-リン酸エピメラーゼによって 3-エピマーのリブロース 5-リン酸から得られる.

トランスケトラーゼ(TPP 依存)によって, リボース 5-リン酸あるいはエリトロース 4-リン酸へと 2 炭素を転移し, 自身は 3 炭糖のグリセルアルデヒド 3-リン酸となる. 2 炭素を転移されたリボース 5-リン酸とエリトロース 4-リン酸は, それぞれセドヘプツロース 7-リン酸フルクトース 6-リン酸になる.

セドヘプツロース 7-リン酸

ペントースリン酸経路

ケトヘプトース(炭素数 7 のケトース).

トランスケトラーゼ(TPP 依存)によってキシルロース 5-リン酸由来の 2 炭素がリボース 5-リン酸へと転移したもの.

トランスアルドラーゼによってグリセルアルデヒド 3-リン酸へと 3 炭素を転移し, 自身は 4 炭糖のエリトロース 4-リン酸となる. 3 炭素を転移されたグリセルアルデヒド 3-リン酸は,フルクトース 6-リン酸となる.

エリトロース 4-リン酸

ペントースリン酸経路

アルドテトロース(炭素数 4 のアルドース).

トランスアルドラーゼによってセドヘプツロース 7-リン酸が 3 炭素を失ったもの.

トランスケトラーゼ(TPP 依存)によってキシルロース 5-リン酸から 2 炭素を得て,フルクトース 6-リン酸となる.

アセチル CoA

クエン酸回路

クエン酸回路に炭素源として投入される主要な物質.

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(TPP 依存,ピルビン酸 → CO2), ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(リポ酸依存, CoA-SH → アセチル CoA), ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(FAD依存, NAD+ → NADH + H+) の 3 つでできたピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によって, ピルビン酸から生成される. この反応は, α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼによる α-ケトグルタル酸からスクシニル CoAへの変換, そして分枝鎖 α-ケト酸デヒドロゲナーゼによる 分枝鎖 α-ケト酸からそのアシル CoA 誘導体への変換 と類似する.

アセチル基に含まれるメチル基 -CH3 はそのままだと酸化しにくいが, クエン酸回路に入る際クエン酸シンターゼ(H2O → CoA-SH)によってオキサロ酢酸と縮合してクエン酸となることで, -CH3 からメチレン基 -CH2- になって反応性が高まる.

オキサロ酢酸

糖新生・クエン酸回路

炭素数 4 で,シュウ酸(オキサロはシュウ酸を意味する)と酢酸がくっついたような構造をしている.

ミトコンドリア膜を通過できないため,ミトコンドリアマトリックスとサイトゾル間の輸送にリンゴ酸アスパラギン酸シャトルを必要とする.

ピルビン酸カルボキシラーゼ(ATP⇄ADP,ビオチン依存)によってピルビン酸から得られる. これは,細胞内濃度の低いオキサロ酢酸に対するアナプレロティック(補充)経路としてはたらく.

ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(GTP⇄GDP)によってホスホエノールピルビン酸と CO2 になる. ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼのアイソザイムには, ミトコンドリアマトリックスに存在するものとサイトゾルに存在するものがある. 糖新生の中でグリセルアルデヒド 3-リン酸デヒドロゲナーゼが必要とする NADH をリンゴ酸アスパラギン酸シャトルによって供給する場合,サイトゾルのアイソザイムがはたらく. 一方,乳酸を用いた糖新生では, 細胞質における乳酸からピルビン酸への酸化によって NADH が得られるため, ミトコンドリアのアイソザイムがはたらく.

リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NAD+⇄NADH+H+)によるリンゴ酸の酸化で得られる. クエン酸シンターゼによってアセチル CoA と縮合し,シトロイル CoA を経てクエン酸となる.

クエン酸

クエン酸回路

クエン酸シンターゼによってオキサロ酢酸アセチル CoA が縮合してできる.

アコニターゼ(可逆)によって,シス-アコニット酸を経てイソクエン酸となる. アコニターゼは鉄-硫黄中心をもつが,鉄の欠乏によってこれを失うと構造が変化し, mRNA に結合してタンパク質合成を調節する IRP となる. IRP によって調節されるのは, トランスフェリン受容体やフェリチンといった鉄の代謝に関わるタンパク質である.

イソクエン酸

クエン酸回路・グリオキシル酸回路

クエン酸の異性体. アコニターゼによってクエン酸から変換される.

イソクエン酸デヒドロゲナーゼによる酸化的脱炭酸を受けて α-ケトグルタル酸となる. 酸化に NAD+ を用いるイソクエン酸デヒドロゲナーゼは, ミトコンドリアマトリックスに存在してクエン酸回路に関わる. 一方,酸化に NADP+ を用いるイソクエン酸デヒドロゲナーゼは, ミトコンドリアマトリックスとサイトゾル両方に存在し, NADPH の生成に関わる.

イソクエン酸リアーゼによってグリオキシル酸コハク酸に開裂する.

α-ケトグルタル酸

クエン酸回路

2-オキソグルタル酸とも.

イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NAD+/NADP+,CO2 放出)によってイソクエン酸から得られる. α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体に近縁)によってスクシニル CoAとなる.

スクシニル CoA

クエン酸回路

「スクシニル」はコハク酸のこと.

α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体によってα-ケトグルタル酸から得られる. スクシニル CoA シンテターゼ(GDP+Pi⇄GTP+CoA-SH)によってコハク酸へと変換される.

コハク酸

クエン酸回路・グリオキシル酸回路

スクシニル CoA シンテターゼによって補酵素 A と結合しスクシニル CoAとなる. コハク酸デヒドロゲナーゼ(FAD⇄FADH2)によって酸化されてフマル酸となる.

イソクエン酸リアーゼによってイソクエン酸から得られる.

フマル酸

クエン酸回路

コハク酸デヒドロゲナーゼによってコハク酸から得られる. フマラーゼによる加水を受けてリンゴ酸となる.

リンゴ酸

クエン酸回路

生体内では ʟ-型である.

フマラーゼ(H2O消費)によってフマル酸から得られる. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NAD+⇄NADH+H+)によってオキサロ酢酸となる.

リンゴ酸酵素による酸化的脱炭酸を受けてピルビン酸となる.

グリオキシル酸

グリオキシル酸回路

イソクエン酸リアーゼによってイソクエン酸から得られる. リンゴ酸シンターゼによってアセチル CoAと縮合してリンゴ酸になる.

トリアシルグリセロール

リパーゼによってグリセロール 1 分子と脂肪酸 3 分子に分解される.

グリセロール

グリセロールキナーゼ(ATP→ADP)によってグリセロール 3-リン酸となる.

グリセロール 3-リン酸

グリセロール 3-リン酸デヒドロゲナーゼ(NAD+→NADH+H+)によってジヒドロキシアセトンリン酸へと酸化される.

脂肪酸

アシル CoA シンテターゼ(ATP→AMP+PPi)によって補酵素 A と結合しアシル CoAとなる.

アシル CoA

アシル CoA デヒドロゲナーゼ(FAD→FADH2)によってトランス-Δ2-エノイル CoA へと酸化される.

トランス-Δ2-エノイル CoA

エノイル CoA ヒドラターゼによる水の付加で β-ヒドロキシアシル CoAとなる.

β-ヒドロキシアシル CoA

β-ヒドロキシアシル CoA デヒドロゲナーゼ(NAD+→NADH+H+)により β-ケトアシル CoA となる.

β-ケトアシル CoA

アシル CoA アセチルトランスフェラーゼによりアシル CoAアセチル CoA に分かれる.

アセトアセチル CoA

β-ヒドロキシブチリル CoA の酸化によって得られる.チオラーゼによってアセチル CoA 2 分子に分かれる. β-ヒドロキシ-β-メチルグルタリル CoA シンテターゼによってアセチル CoA と縮合し,β-ヒドロキシ-β-メチルグルタリル CoA となる.

β-ヒドロキシ-β-メチルグルタリル CoA

β-ヒドロキシ-β-メチルグルタリル CoA リアーゼによって,アセチル CoAアセト酢酸に開裂する.

アセト酢酸

β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(NAD+⇄NADH+H+)によって β-ヒドロキシ酪酸から得られる.

β-ヒドロキシ酪酸

β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(NAD+⇄NADH+H+)によってアセト酢酸となる.

アセトン

自発的な,あるいはアセト酢酸デカルボキシラーゼによるアセト酢酸の脱炭酸で得られる.